ちょっと前に、特許庁のシステム開発プロジェクトが55億円もの予算を突っ込んだ挙句にとん挫してしまったことが話題になった。2006年から始まったプロジェクトであるが、設計ができずにあきらめたようだ。特許庁は開発ベンダーである東芝ソリューションの能力不足を責め立てているが、どうもそんな単純な問題ではないように思う。

ぼくはむしろシステム化以前の要求定義のところに問題があったと思う。そうなると、ITベンダーというより発注者側の特許庁の方に責任があるのではないだろうか。役所も大企業もそうなのだが、日本ではSIerにお任せという姿勢がほとんどで、RFP(Request for proposal)も自分たちが書かないでSIerが書く場合も多い。従って、お任せされてもやりきれる大きなSIerしか受注できないという構図である。

つまり、発注者側であるユーザのシステム開発に対する姿勢とそう仕向けているSIerに大きな問題が横たわっているのがわかる。自分たちの要求を抽出して定義することができないユーザとそうした情報の非対称性を悪用して大きな利益を得ようとするベンダーが反目するのではなく馴れ合っているのである。

こうした慣習はずいぶんと前から指摘されているにもかかわらず、またぞろ同じような失敗を繰り返したことにショックを受ける。ある意味日本の縮図みたいなもので既得権益をお金の出し側ともらい側の両方が守ろうとしている。いまや変革の要請が至る所から発っせられているのに直らないのだ。

ではこうした事態を防ぐにはどうしたらよいのだろうか。今までの延長線上にあるような小手先の対策では無理だろうと思う。やれプロジェクト管理ができていなかったとか、スキルが不足していたとか、要件定義のやり方がまずかったとか、こうしたHowの領域での改善では立ちゆかないと思う。もっと抜本的な方策を編み出さない限り同じような失敗が今後も続いて行くような気がする。

その方策として、3つくらいが考えられると思う。まず一つ目は、このブログでも口を酸っぱくして言ってようにHowではなくWhatを優先して考えるという態度である。そのWhatはオペレーションから発想するということである。特許システムとはどういう使い方をしたいのか、ユーザは誰でその人たちにどのように使われるのかという視点で、そのための道具を定義してからHowに入るべきなのである。聞くところによると特許庁の1000人に業務フローを書かせたらしいのですが、みんなに使われる道具という観点に立てばそんなアプローチはしないはずです。

2つ目は、どうして100億近いシステムを一気にやろうとしたのでしょうか。少なくとも特許の検索の仕組みと特許庁の人たちの業務とは切ってもできるのではないでしょうか。近頃は、SOA的なアーキテクチャがあって、ビックバン方式ではなく段階的、部分的のシステム構築が可能になっています。これは投資リスクの回避にもなりますし、その組織の成熟度の進展に合わせて作って行くことで"猫に小判"的なシステム構築を防ぐことができます。

3つ目は、契約の問題です。本件も東芝ソリューションにお金が払われるのかどうか分かりませんが、通常準委任契約が多いので工数をかけたらそれに見合った費用をもらえます。こうした契約により成果が出ようと出まいと、使われようが使われまいがお金が払われるのはやはりおかしいわけで、理想的には成果報酬型が望まれると思う。

ただ、現実的にはその成果をどう測るのかが難しいし、成果が出ない時の最低保証をどこまでも持たせたらいいのかといったことがありなかなかできないでいます。しかし、見積りのところの工夫はある程度できるように思えます。設計までは準委任でやっておいて、開発は請負にして、成果がでたらそれをある割合で還元してもらうといったやり方もある。しかし、もっと進んで前に言ったように家電を買うようにできたらこうした問題はなくなると思うのだがいつことやら。
  

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This page contains a single entry by Masanori Wada published on February 7, 2012 10:38 AM.

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