前回、上流と下流の分断の問題をソフトウエア開発のケースで論じたので、今回は業務システム開発のエリアの話をしましょう。まずは、業務システム開発とソフトウエア開発とでは明確に違うということを指摘したいと思う。大きな違いは、プロダクトアウトかそうでないかです。

業務システムというのは、特定のユーザの特定の要求により、その要求に答えるようにシステム構築を行います。一方、ソフトウエアというのは、不特定多数の想定ユーザために作り手側で要件を決めてプロダクトをあらかじめ作ってそれを売るということをします。だから、極論するとソフトウエアは使われなくてもいいというか、勝手に作ってしまうわけですが、業務システムは使われなったら意味がありません。また、ソフトウエアは自分たちがこうしたいというものを作るから当然コードを書かなくてはできません。

世の中この違いをあまり理解していないのではないでしょうか。もしちゃんとわかっているなら、なぜ業務システムでいつも特定のユーザの特定の要求に対して特定のコードを書くのでしょうか。まるで料理を作るその時に、醤油や味噌を一から作り出していつように思えてなりません。おそらくこの瞬間でも世界中で同じコードを多くのプログラマーが書いているのないででしょうか。だから人月の罠にはまるわけである。

なぜ、"コードはソフトウエアを作る時に書いて、業務システムはそのソフトウエアを使って組み上げる"ことができないのでしょうか。プログラマーは、役に立つ魅力あるソフトウエア(ツール)を産み出すことに自分のスキル、意欲を傾注したらいい。そして業務システムを作る人は、業務プロセス、仕事スタイルをデザインできる人がすればいい。後者こそ本来のSIerのめざすところではないでしょうか。こうすればユーザ自身に作らすことも可能になる。GoTheDistanceさんがブログの最後にこう言っています。

<blockquote>一番大切なことは「自分が使っていて楽しい、自分が作っていて楽しい」そういうサービスなりシステムなりに触れて、どのような問題解決をITで行うことが自己実現に繋がるのかを見いだすことだと思います。</blockquote>

これを誰に対して言っているかです。ここには前に言った混在があります。すなわち、「自分が使っていて楽しい、自分が作っていて楽しい」そういうサービスなりシステムを作るのは、プロダクトデザイナーとプログラマーです。どのような問題解決をITで行うことが自己実現に繋がるのかを見い出しお客さんに提示するのがSIエンジニア(ビジネスエンジニア)ではないでしょうか。

実はこの混同はソフトウエアベンダーにもあります。その象徴的な例として、BPMツールのことを言うと、BPMツールがなかなか売れていないのですが、その理由はソフトウエアを買うところとBPMを買うところが違うのです。つまり、ソフトウエアというのはあくまでシステム開発のフェーズで使うものとして捉えられるのでどちらかというと企業では情報システム部門が対象になります。

しかしながら、BPMはそうではなくて現実のビジネスに貢献できるよう業務システムをどう構築するのか、それをどうオペレーションしていくかが大事なので、当然のように事業部などの現業へのアプローチが必要になるわけです。ここは、システムの作り方も売り方も違っているわけです。

要するに、上流・下流の分断の問題ではなく、最大の問題はIT業界全体が顧客ニーズがわかっていないということに尽きます。顧客の定義さえできていないし、提供すべき商材の意味も理解していないから、ユーザが欲しくないものも一から作りだして結局使われない。それではそこで働く人たちにとって何のために自分のスキルが活かされているのかが見えない悲劇であるということになります。そこにはそもそもITとは何かという根源的な問題も潜んでいるように思えます。
 

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This page contains a single entry by Masanori Wada published on April 8, 2012 10:28 AM.

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