ビジネスサービスのつくり方 - 第3章 設計■    WhatはHowに優先する
サービスの構成要素とサービスをデザインすべき領域について議論してきたが、いったい何を設計したらよいのでしょうか。サービスを提供する実体というか広い意味でのツールは何かを考えてみましょう。それは少し抽象的かもしれませんが「プロセス」と言ってもよいと考えています。

サービスの構成要素は「プロセス」「機能」「情報」ということを言いましたが、この3つが等価に並んでいるのでしょうか。どうも主従関係がありそうですね。これからは「プロセス」を広くとって主として見ることにします。すなわち、「機能」「情報」はプロセスの中に包含して考えていこうということです。プロセスをオペレーションするためにもつべき機能であり、サービスを受けるための機能であり、プロセスにおける意思決定のための情報であったり、プロセスで生成されるデータであったり、サービスそのものが情報の固まりだったりするわけです。

ということは、サービスを提供するのは「プロセス」を通して行われると規定できそうです。そのとき、すぐにサービスプロセスをどうやって作ったらよいのかという進み方はちょっと勇み足ですよね。それだと、サービスごとにあるいはサービス受給者ごとに作らないといけなくなります。そこはちゃんと構造化して、こんな形のサービス形態で提供するというふうに考えたいものです。ある程度標準化、共通化することが望まれます。

それでその構造はどうあるべきかを発想するときにはオペレーションから見ていくことをお勧めします。なぜならば、所詮ツールを作るのですから、使われないものをせっせと作っても意味がありません。使ってもらって、あるいは受けてもらった結果としてサービス受給者が満足しなくてはいけません。ですから、実際のサービスオペレーションから使ってもらえるため、喜んでもらえるためにはどんなサービスの形がいいのか、つまりHowの前にWhatをしっかりとデザインすることが大切です。

こうしたWhatはHowに優先するという考え方をもたないと、たとえば情報システムをつくる場合なんかだと、直ぐにどんな言語で開発したらよいのかとか、パッケージはどれにしようかといった技術視点でのHowからのアプローチになりがちでです。いくら腕のいい大工さんが家を作ったとしても、ひどい設計の家だと何ともならんでしょう。ところが日本ではHowの技術を評価する傾向が強いように思います。いいものを作れば売れるという思いもここから出ています。

よく例え話をするのですが、有名な岡野工業の岡野社長の話です。直径0.2ミリという極細の痛くない注射針(現在は0.18ミリだそうです)を深絞りというプレス加工技術で作ってしまったことで有名になりました。多くの人は岡野さんを絶賛するのですが、もちろんそれを否定するわけではないのですが、もう少しインシュリンの注射針で苦しんでいる人を助けてあげたいということから極細の注射針を作ってくれと頼み込んだテルモの人を褒めてあげたいのです。

HowではなくWhatを考えた人です。もちろん、両方とも重要であることは間違いないのですが、岡野さんのHowを生かすためのWhatを考えたことがすごいのであり、そこからあのような製品ができたのです。サービス学会では「製造業=製造代行サービス業」と定義していることからもビジネスサービスではWhatを先行させるアプローチが重要なのです。
  

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