December 2013 Archives

2. 4つの創造ステップ

イノベーションには、プロダクト主導型のものとビジネスモデル主導型の2種類があるという指摘をしました。そのどちらにしても他のものと違った価値をもったものでなければいけません。プロダクト主導型であれば製品やサービスが従来なかったものであるとか、顧客が待ち望んでいたものだったとかいうものです。ビジネスでは、新しい顧客との関係だとか、考えつかなかったサービス提供の仕組みだったりとか、なるほどそういう手があったかというものでしょう。それを発見し作り出すには創造のプロセスが必要になります。そのステプは次のような4つのステプになります。

(1)ビジョンを描く (ウオンツ)
(2)アイデアを創出する(技術棚卸・フィールドワーク等の調査観察)
(3)コンセプトを生成する  (概念化、構造化)
(4)プロトタイピングデザインを行う (反復試作) 

これは。慶応大学の奥出直人教授の「デザイン思考の道具箱」からもってきたものです。デザインというとどうしても"モノ"の形状のデザインを思い浮かべがちですが、それだけではなく、"コト"や、ここで取り上げているビジネスモデルにも適用できるものだと考えています。新しく何かを生み出す時に使うプロセスというふうに捉えてみてはいかがでしょうか。

最初のビジョンは何のためにイノベーションを起こすのか、どうしたいから、どうなってほしいから、新たな価値を提供するのかというものです。ここは非常に重要なところで、最初の大きな方向を示すことです。これがしっかりしていないとあとでブレてしまうことにもなりかねないのです。ビジョンは顧客(サービス受給者)の立場になって「〜したい」というウオンツを表現します。

注意しなくてはいけないのが、あまり抽象的でもいけないし、さりとて細かく過ぎてもいけないということです。「人類の平和に貢献したい」なんて言われてもピンと来ないでしょうし、「今期の売上高を20%上げたい」なんていうのもビジョンではないですよね。ちなみにアップルのiPodの例で言えば「どこへでも自分の音楽を持ち歩いてもっと音楽を楽しみたい」です。

さらに注意しなければいけないのが、問題解決型ではないということです。つい、こういう問題、課題があるのでそれを解決するにはどうしたらいいのかと考えがちであるが、それだとデザインしようとする"モノ"や"コト"を矮小化してしまう可能性があります。例えば、問題は個人的なものであったり、本質からずれていたりすることも多いからです。

ただ、最初に設定したビジョンは金科玉条のものとして頑なに守らなくてはいけないかというとそうとも言えません。後の工程で現場を観察したり、プロトタイプを作ったりしているうちに変わる場合もあります。創造のプロセスでは杓子定規な進め方ではなくもっと柔軟なプロセスで行っていくのです。創造性はもともと枠をはめないところから出てくるわけですから自由に行きつ戻りつやっていけばよいと思います。
  
1. 2つのイノベーションタイプ

イノベーションといってもどこの領域でイノベーションを起こすのかというのがあります。イノベーションの対象は何かということです。2つの対象があると考えます。

プロダクト主導イノベーション
ビジネスモデル主導イノベーション

プロダクトというのは、単に物理的なモノだけではなく、商品すなわち製品やサービスをいいます。画期的な商品が大きな市場を獲得して断トツの地位を占めることです。ただ、これが最初に言ったように全く新しい技術とかデバイスを使っていなくてはいけないということはありません。iPodの例を挙げるまでもなく、既存技術や既存部品を組み合わせて新しい製品をつくるのがよくあるイノベーションです。

サービスでも同じことが言えます。今までなかったようなサービスも大事ですが組み合わせたものとか、サービスの適用箇所が今までにない斬新なところだったりすることもイノベーションであると考えます。なんだそんなこと気が付かなったよというものであるかもしれません。

どちらかというと、プロダクトイノベーションのほうが発明という言葉から浮かぶイメージからイノベーションの主流だと感じられますが、ビジネスモデルのイノベーションも立派なイノベーションになります。古くはフェデックスだとかサウスウエスト航空、最近ではアマゾンとか、多くのネットビジネスなどビジネスモデルを変えることで他社との競争に勝利し、顧客を拡大しています。もう成熟したと思っていた市場でもまだ効果的なビジネスモデルが形成できることは決して少なくないように思えます。

この2つのタイプのイノベーションはそれぞれが独立してあるわけではなく、当然のように相互に絡み合っています。新規のプロダクトが開発されたらそのビジネスモデルも新しいものになるだろうし、ビジネスモデルを変革したら、製品コンセプトも少し変えようなんてこともおこります。要は、どちらが主導的な位置にいるかでアプローチの仕方が変わるわけです。

イノベーションを起こそうと言うことの大事な前提は既成の概念を取り払ってものごとを考えることだと思います。不連続の連続と言ってもいいかもしれませんが、できあがったものの延長にはイノベーションは待っていてくれないでしょう。それと、プロダクトであれ、ビジネスモデルであれ、これからのイノベーションは、顧客(個客)の視点、グローバル対応、ITの活用など従来にはなかった新たな考え方が重要になるのではないでしょうか。
  

第1部 ビジネスモデルからプロセスへ

ここでイノベーションということを考えてみましょう。わが国では2006年7月に策定された「経済成長戦略大綱」において、 「イノベーション・スーパーハイウェイ構想」の構築を掲げられました。そこから各所でイノベーションという言葉が発せられ、こぞってイノベーション創出を指向しだしました。

この「イノベーション・スーパーハイウェイ構想」とは、「科学技術創造立国の実現に向けて、イノベーションを創出する仕組みを強化するため、(1)双方向の知の流れの円滑化、(2)異分野の融合、(3)出口(価値創造)との効果的なつながりの構築を推進するもの」となっています。そして、イノベーションの定義として、「単に「技術革新」と訳されることが多いが、技術革新に留まらず、広く経済活動全般において、新しい方法を取り入れて革新していくこと。経済学者のシュンペーターは、イノベーションの類型を次の5つとしている。《 新製品の開発、新生産方式の導入、新市場の開拓、新原料・新資源の開発、新組織の形成 》である」としています。

ただ、この説明を聞いて少し違和感というか物足りなさを感じざるを得ません。例えば、単なる技術革新に留まらずと言いながらも結局は革新的なことをすればいいのだというふうに読み取れるからである。ですから「科学技術創造立国」に実現に向けてという表現になるわけで、従来型日本のものつくりの延長でしかないように思えます。つまり、いいものを作れば売れるという品質至上主義から抜け出ていないのではないでしょうか。

シュンペーターがいうイノベーションとは「発明と市場との新結合」ということです。個別の開発や革新を言っているわけではなく、大事なのは市場との関係なのです。つまり、ちゃんと結果を出す、市場に爆発的に受け入れられてこそ初めてイノベーションと呼べるのです。

とかくわが国の企業は市場との対話がうまくなく、プロダクトアウト型のやり方から脱皮できないない傾向があります。日の丸半導体がサムソンにしてやられたのは、マーケティングの重要性を軽視したとも言われています。ただ、このことは、国がああしろこうしろと言ったところでおいそれとできるわけではなく、経営者のセンスとか、事業責任者のマインドとか、研究開発の市場感覚とかいった企業自体の組織能力に依存するのだから、国としてはそういったアクティビティを阻害せずに、やりやすい環境を整えることが大事になるのでしょう。

従って、結果を出す仕組みまで作って初めてイノベーションを見届けることができるのです。新しいビジネスモデルを作っただけ、技術革新をしただけでは不十分です。ですから戦略からオペレーションまで一貫されていて、かつ連動していかなくてはいけません。多くの人が使ってくれて役に立つ、どんどんファンが増えるようなものを作ってこそ評価されるべきなのです。
  

-- はじめに --

企業は何らかの形で常に変化していかなくては生き残ることができない。また変化しなくてはいけないスピードがどんどん早くなってきている。それはビジネスを取り巻く環境がめまぐるしく変わっているからである。そして、変化も予測できるものから、不確実なものが増えてきていることがある。

変化はイノベイティブなものであればあるほど企業の体質を強化し持続的なものになっていく。逆にこれまで優良と思われていたような企業も変化対応をしくじるとあっという間に消えていってしまう恐ろしい時代でもある。ですから、企業はいかにして環境の変化を読み取り、素早く対応する組織能力をもったものにしてくことが大変重要なことなのである。

一方、IT技術の進展は目を見張るものがあり、毎年のようにあたらしい技術やサービスが登場してきている。しかも、個人で使うようなものがいつの間にか会社に中でも使われるように、個人的な生活と会社生活とのボーダーもだんだんと取り払われようとしている。特にインターネットは必要不可欠なインフラとして確固たる地位を築いている。もはや、顧客接点のところではインターネットなしでは成立しなくなってきている。

こうしたIT技術の高度化は企業の変化対応力を強化するための武器としては非常に強力なものになろう。しかしながら、ITを使いさえすればうまくいくという短絡的な考え方では失敗するのは目に見えている。ITはあくまで道具であるから、道具は使う人、使い方でいかようにも変わり得るのである。つまり、ITという道具をうまく使いこなすリテラシーを持たないとうまくいかない。むしろそちらのほうがより重要性を帯びてくる。

そして、これまでITを現場での効率化の道具として主に捉え現場まかせにしていた経営者は、これからは経営の道具として見直して行く必要がある。極端な話、経営方針や事業戦略らしきものもなしで経営していた時代もあったかもしれないが、そんな会社は存続すらできなくなる。であれば、経営方針や事業戦略、あるいは自分の経営者としての思いをどうやって実現させるかは経営者の最たるミッションであるはずだ。

経営者自らが経営システム、事業プロセス、業務オペレーションに関心をもち自らの手のひらに乗せて操ることが大切なことになってくる。そのためにも是非不断のイノベーションを実行していくのに適切な企業システムとは何のかを真剣に考えていくべきだろう。もちろん経営者のみならずミドルあるいは現場の人たちも一緒に考えてほしいと思う。

ただし、少し前提を理解しておいてください。企業システム全体というと最上流の経営理念、経営方針、戦略立案といった部分についてはここでは言及しません、また製造現場作業のようなものも含みません。つまり、経営戦略とKGI(Key Goal Indicator)は所与ものとしてありそれを受けてビジネスモデルを描くところから始めていきます。