April 2014 Archives

さて、今回からは第2章の「プロセス設計からシステム構築へ」に入っていきます。最初のテーマは3つのパラダイム変化ということになります。コンピュータが登場して、それらが業務システムに使われて長い時間が経過してきましたが、それほど大きな変化はなかったように思います。

しかしながらビジネス環境もさることながら、インターネットの出現が非常に大きなインパクトを与えています。そうした中で、ITシステムを取り巻くパラダイムも変化せざるを得なくなってきています。技術の進化がシステムの構造あるいは作り方、使い方を変えていくのです。それらは次のような3つのパラダイム変化ではないでしょうか。

(1) データ・機能中心からプロセス中心へ
(2) 作って終わりから動かしてナンボへ
(3) 個人作業からチームワークへ

最初のプロセス中心への転換ですが、元来ITは情報処理と言われるようにインプットされたデータを計算処理してアウトプットとして結果を出し、それをストアするというものでした。従って、データを中心として考えられ、その入力画面の機能をどうするのか、どんなレイアウトの帳票を出力するのかといった観点でシステムが作られていました。

ところが、現実のビジネスの世界ではそれだけで成り立っているわけではけっしてなく、むしろデータの処理以外のところのほうが時間をとっているし、重要なことが多いはずです。その世界はどちらかと言うと属人的でインフォーマルな領域になっていたわけです。タバコ部屋で大事なことが決まっていると揶揄されたものです。

いまや隠すことは許されないことも多くなりオープン性へのシフトが進んでいます。つまり、情報共有とかコミュニケーション、あるいはWebで言われるような集合知といった考えが広く取り入れられるようにもなってきました。タバコ部屋で行われていた意思決定が表に引きずり出されてきたのです。

そうした動きに不可欠なものがプロセスになります。ビジネス上で発生する様々な事案はほとんどの場合プロセスを経て処理されて行きます。従って、システム作りも従来のようなデータ・機能中心からプロセスへ中心へと変えて行く必要があります。

ただ、こういうとデータやUIはどうでもいいのかとか思われがちですがけっしてそういうことではありません。どれもが重要なのですが、軸足をずらすというか、何を先行して考えるかでプロセスを中心に、あるいはプロセスを先行して考えていくというアプローチを推奨しています。
  

ビジネスモデルを書いて、お客さんにどんな価値提案をするのか、別な言い方をするとどのように差別化され、競争優位性をもたせた製品やサービスを提供するのかが決まると、それをどう実現していくかに移っていきます。PDCAで言うと、こうしたいというPlanがビジネスモデルとして表現されますが、次のDoをどうするかになります。

ビジネスモデルは静的で構造的な側面をもったものですが、実行ということになると動的で流動的な側面を持ったものになります。すなわち、プロセスへの展開が必要になってきます。往々にしてビジネスの実行はプロセスをオペレーションすることで成果を出すからです。ビジネスモデルで導出された課題であるビジネス要求を受けるものとしてプロセスが存在するわけです。

さて、ビジネスモデルの構成要素は、それぞれで背後にプロセスを持っています。その対応を見ていきましょう。

(1) 商品            ・・・商品企画、商品開発
(2) 市場・顧客         ・・・顧客獲得
(3) 顧客との関係      ・・・商談・見積、アフターサービス
(4) サプライチェーン    ・・・受注、出荷、設計、製造
(5) パートナーとの関係  ・・・調達
(6) コスト構造        ・・・(全体)
(7) 収益モデル        ・・・代金回収・支払
(8) 経営資源         ・・・リソース管理

ということで、ビジネスモデルと関係する12の主要なプロセスが選択されてきました。ビジネスモデルで提供商品としてのコンセプトができたら、それを実際に企画して開発するプロセスへと展開されるわけです。

市場や顧客ではセグメンテーションやターゲッティングにより絞られた顧客に向かってプロモーションをしたりして顧客を獲得します。さらに顧客は潜在顧客から見込み顧客化し、受注をもらう顧客となり、リピートオーダーが来るような優良顧客へと進化させます。また、最近ではただ売ればいいというのではなく、買ってもらったあとのアフターサービスで顧客との結びつきを強くすることも大事になってきています。

次は、供給サイドのビジネスモデル要素として、サプライチェーンやパートナーとの関係がありますが、それらは基本的にはサプライチェーンプロセス、すなわち、受注出荷、調達、設計、製造というプロセスが関連付けられます。パートナーとの関係では主に調達プロセスが関係します。パートナーもひところのような元請け下請けのような垂直関係もありますが、今は分業的な水平関係も増えてきました。また、単に物品の調達にとどまらずに、技術、ノウハウなどのソフト面でのパートナーシップも盛んです。

これ以外のコスト構造、収益モデル、経営資源というのはプロセス的な意味合いが薄いものです。しいてあげれば、お金の流れのところになりますが、日常のオペレーションも少なく、最初にどういうフォーメーションにするかが重要になります。また、経営資源については、個別リソース管理の仕組みが必要になります。要するにマスタ管理です。ですから、プロセス管理というよりもデータ管理の色彩が強くなります。
  
これで、第1章の「ビジネスモデルからプロセスへ」を終わります。次回からは第2章の「プロセス設計からシステム構築へ」に入っていきます。ビジネスモデルを記述し、そこにあるビジネス要求をどのプロセスへ展開していくのかまでを議論してきましたが、次はそのビジネス要求をプロセスがどのように受けて実際に動かせるものを作っていくかになります。
  


次は、10の提案価値ということになります。ビジネスモデルというのは最終的には顧客に対してどういう価値を提供するのかということになります。逆に言えば、顧客は自分が欲する価値を提供してくれる製品やサービスまたその提供者を選択するわけです。BMGでは次のような10の価値を提案しています。ではそれぞれを簡単に見ていきましょう。

(1) 新奇性
「新規性」ではありません。つまり単に新しければよいということではないのです。そのニーズを満たすものがなかったため、顧客自身さえ気づいていなかった新しいニーズを満たすものです。
(2) パフォーマンス
製品やサービスのパフォーマンスを上げて価値を生み出すことです。最速の処理スピードをもったコンピュータといったものです。ただ、これは製品やサービスだけではなく、圧倒的に短い納期なんていうのも価値となるでしょう。
(3) カスタマイゼーション
個人や顧客セグメントが抱える特定のニーズに合わせて、製品やサービスをカスタマイズすることで価値を生むことです。最近、受注設計生産や試作といったニーズが増えているように思います。これもカスタマイゼーションですね。
(4) 仕事を終わらせる
ちょっとわかりづらい表現ですが、顧客の抱えている仕事を手伝うことで価値を生み出すことです。例えば販売して終わりではなく、その後のメンテナンスも請け負うといった形で、アウトソーシングのようなものです。
(5) デザイン
優れたデザインにより差別化することです。単に機能的に優れているだけでは製品は売れない場合もあります。見た目のきれいさとか、機能美のようなものは今や非常に大事な要素となっています。アップル製品とかダイソンのデザイン性は有名ですね。
(6) 価格
低価格はよくある価値だといえます。やはり多くの顧客は安価なものを求めるものです。逆に価格を高くするという戦略もないことはないでしょう。ブランドに近い意味になります。今では、更に進んで無料提供の流れも広がっています。
(7) コスト削減
顧客のコスト削減に寄与することで価値を生み出すこともあります。最近の例でいうと、クラウドサービスなんかそうかもしれませんね。ITの「運用コストを格段に下げることに寄与しています。
(8) リスクの低減
商品やサービスの購入時に顧客が被るリスクを減らすことによる価値です。中古車の1年サービス保証とかITサービスレベルの保証といったものがこれにあたります。
(9) アクセスしやすさ
これまで製品やサービスを購入できなかった顧客にも利用できるようにすることで価値を生み出す方法です。例えば、大きな投資を分割して少額の商品にし買いやすくするといったことです。
(10)快適さ/使いやすさ
製品をより快適に使いやすくすることは大きな勝ちになります。iPodとiTunesの組み合わせで非常に使いやすい音楽プレーヤーになった例などはまさにこれです。

(注)BMGにはもうひとつブランドというのがあります。ただ、ブランドというのは長い時間で確立されるものだから、起業した時などは価値にはなりませんし、商品提供側から見るとブランドというのは経営資源の一つだとしたほうがよいので外してあります。