(4)期待と効果
BPMに何を期待するのでしょうか。その期待に既存の手段では応えられなかったからBPMに期待するのでしょうか。もし、このあたりが明確になっていて、効果が実感できれば、今頃は大ブームになっているはずです。ところが、徐々に浸透してきているとはいえまだまだのようです。ということは、期待するところがないのか、期待することはあるのだがBPMではできそうもないと思っているのかのどちらかなのでしょう。

おそらく今の経営者は期待するところというか、自分たちを取り巻く環境の変化に対して臨機応変に手を打っていかないと持続的な発展どころか事業の継続さえ危なくなるという危機感は持っていると思います。ですから、俊敏にかつ的確に経営の舵取りができる仕組みと仕掛けを期待しているはずです。

そうした期待をかつてはERPやCRMなどに求めたと思いますが無理だったというのが定まりつつあると思っています。ただ、まだまだERPを入れればプロセス改革ができると思っている人もいるように、大金をかけた割には効果がないと分かっていながら、ではどうしたらいいのかと悩んでいるのかもしれません。そうした人たちがそこはBPMだとなぜ飛びつかないのでしょうか。

プロモーションの不足といえばそうなのだが、難しいのは、これこれの問題があるからそれを解決するものとしてBPMがあるといった単純さで訴求できないところがあることです。たとえば、在庫が多いからそれを削減するために在庫管理システムを作ろうといった場合などはわかりやすいのですが、BPMと在庫削減が結びつかないと言われてしまうのです。

つまり、BPMというのは大前提が"ビジネス(事業)全体のプロセスを記述する"ということなのですが、そこがなかなか始められないのです。大前提という意味は、プロセスを書くことで自分たちのやっている事業がいったいどんなものなのか、どんなことをしているのかが俯瞰できるからなのです。すべてはそこから始まるのです。先ほどの在庫の問題にしても単に在庫の部分だけを見ていては、真の原因を見損なってしまうこともありえるのです。

自分たちの事業をプロセスという姿で掌中に納めれば、そこにどんな問題が潜んでいるのか、こういう戦略を実行するにはどこのプロセス改革を行えばいいのかがわかるようになります。これがBPMに期待する大きな理由です。ただ、いま言ったように直接的な問題解決にすぐにいけないので、"せっかち"な経営者になかなか理解してもらえないのかもしれません。

BPMのプロセスを記述して俯瞰して見るということは多くの効果をもたらします。本事例でも、まずプロセスを書いてそれを皆で眺めているとさまざま問題点や課題が浮かんできました。というのも、プロセスというのは多くの要素から成り立っていますから、どの要素に問題があるのかがわかるわけです。業務ルールの不備で混乱しているとか、責任の所在がはっきりしていないとか、同じような仕事を重複してやっているといったようなものが抽出され、そこを改善することで多面的な成果が生まれてきます。成果の主なものは次の3点でした。

事業成果の実現
人材育成、組織能力の向上
IT投資の低減

事業成果の実現では、当初の狙いが、標準品から特注品にシフトして売上を増加させることでしたが、それは特注品の売上を前年比でほぼ倍増させることができて成果を確認できたのですが、予想外というかうれしい誤算だったのが②の人材育成、組織能力の向上という成果です。

え、BPMで人材育成、組織能力の向上?と思われるかもしれませんが、実際に成果が上がったことです。プロセスで自分たちの業務も捉えるわけですから、自分が何をすべきか、他の人が何をやっているのかが見えてきます。そうすると、チームで働くことの意義を自覚でき、結果的に組織能力も向上し、人が育つことにつながるのです。

【成功のポイント】
ビジネス成果を得るには自分たちのビジネスプロセスを手のひらに乗せること、またBPMの大きなメリットである人材育成・組織能力の向上には、多くの人を参加させて大いに議論し成果を共有できる体制をとること
  

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